東日本大震災被災地での被災者・自殺者の現状と今後を語る

公開シンポジウム開会に当たって

ご挨拶 NPO法人自殺防止ネットワーク風 理事長 篠原鋭一

理事長 篠原鋭一の写真

皆さんこんにちは。ウイークデーのご多忙の中、ご参集いただきまして ありがとうございます。本日の開会に先立ちまして、すでに皆様方新聞等の報道によりましてご承知のことと存じますけれど、誠に残念なことに本日の発表でございますと東日本大震災において亡くなられた方が15,829人いらっしゃいます。さらに、行方不明になられている方が3,725人いらっしゃいます。今回の被災に伴いまして、ふるさとを離れ避難をされている方、転居を余儀なくされた方々がなんと71,578人という大変多くの方々が ご苦労をなさっておることが発表されております。これは日々刻々と変わってまいりますが、この会の開催に当たり、亡くなられました方々のご冥福をお祈りいたしまして皆様とご一緒に短い時間ではございますけれども、心からなる哀悼の意を表す「黙祷」を捧げたいと思います。恐縮ではございますがご起立をお願いします。それではご自由でございます。手を合わせる方は合わせていただきます。しばらくの間黙祷を捧げていただきます。
黙祷 ・・・・・黙祷を終わります。ありがとうございました。

  この度、私共NPO法人自殺防止ネットワーク風が主催いたしまして、千葉県のご後援をいただき、また社会福祉法人千葉県共同募金会並びに自殺のない社会づくりネットワーク・ささえあいの皆さんのご協力をいただき本日の開催となりました。

  今日のテーマは「東日本大震災被災地での被災者・自殺者の現状と今後」ということでございます。もう皆さんご承知ではございますけれども、日本はここ10数年に亘りまして自ら命を断っていく方々が3万数千人という社会的な状況が続いてまいりました。

  実は私共NPO法人は全国50数ヵ所の相談窓口を開設いたしております。今日もその窓口を担当してくださっている方々が、新潟県あるいは和歌山県というような遠くからお出でいただいております。全国で50数ヵ所、ハワイにも1ヵ所ございますけれど、日々ほぼ24時間体制、死を見つめられている方々、若い15歳、それからお年寄りといたしましては80歳代を越えている方々の相談にのっております。

  一昨年だったと思いますがけれども、アルジャジーラという中近東あるいはヨーロッパそれからアジアで活躍しているテレビ局のクルーが私のところへ参りまして、日本の自殺あるいは自死といわれている社会状況を取材するということで、宿泊をして取材を続けておりました。私プロデューサーの方に「日本にわざわざこれだけのスタッフを伴ってこの自死、自殺の問題を取材にお出でになるというのは先ず基本的にどういう思いからなんですか」ということをお聞きしました。そうしたら非常に象徴的な答えが返ってまいりました。

  「どう考えても1年間に3万数千人の人が自ら命を断つ、あるいは生命を失うことは、戦争が起きたとしてもそうありえない。イラク戦争においても1年間に3万数千人の人達が命を落とすことはありえないでしょう」と。「ところが日本は飛びぬけて自ら命を断っていく人が多い。これは何故かと考えたその時に、日本のどこか大変大きな穴が開いていて、実はその穴は日本人を死へと誘い込む穴ではないか」と。「その穴を私達は探しにきた。で、その穴を撮影して帰りたい。取材して帰りたい」と答えた。これはとても象徴的な言い方だと私は思いました。その穴とは何か。日本の社会だと思います。穴とは自らの命を断つ方々が年間3万数千人という日本の現代社会。後々今日お迎えしております講師の先生方からお話があると思いますけれども、被災地におきましても5月ゴールデンウィークその以前には本当に私達の相談窓口も声は減少いたしまして、今年は自死、自殺という警察庁から発表されるカウント数が減るのではないかと思っておりましたら、ゴールデンウィーク明けと共に、どんどん増え始めました。今民間団体の関係者が予想しておられますけれども、もしかすると今年4万人台という大変な状況が予想されるということでございます。

  そして今、東日本大震災の被災地において、自ら命を断っていくお年よりもいらっしゃる、若者もいらっしゃる、というふうな状況にあります。そういうところをもう一度見つめ直す。被災地の問題が、忘れられているとは申しませんですけれど、日本人の心の中から関心が少し薄らいできつつあるということが被災地へ出向いていて良く感ずるところです。そういう意味から本日、東日本大震災被災地におきまして具体的に活動をなさっておりますお二人の先生をお迎えした訳でございます。

  後程、また詳しくご紹介を申し上げますが、自殺防止ネットワーク風、我々のNPO法人の窓口、お仲間であり、なんと申しましても日々被災地を巡回しながら、"Caf? de Monk"という無料喫茶店を開きながら、多くの方々の心の苦悩をお聞きする活動をなさっている通大寺住職の金田諦應老師。それから金田老師のみならず我々の活動を医療者の立場で支えていただいております医療法人社団法人爽秋会の理事長岡部健先生にもお出でいただきました。  このお二人に、3月11日から現在に至るまでの現地のお話しをお伺いした後、今現状としてどういうことがあって、被災地の方々は何を思い、日本人である我々に対して何を期待されているのかというようなところまで、もっと言えば私達は何ができるのかというところまでの煮詰めができればと願っております。

  それでは入らさせていただきます。最初にこちらの映像を使って、「我々に何ができるか」さらには現場を巡回されているお立場から、「被災者、自殺者の現状と今後」ということで通大寺の金田諦應老師にご講演を頂戴します。 金田老師は、日夜軽トラックに喫茶店の道具を満載して、被災地の津々浦々を巡回されております。温かな眼差しでお話をお聞きになるお姿に、私は深い感動を持っていつも帰って来る訳でございます。そのあたりを含めまして金田老師に伺います。それではよろしくお願い申し上げます。

 

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